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社外役員制度をご存じでしょうか・・・?
日本においては、取締役さんは従業員(社員)のお立場からから就任されるケースのほうが多いようです。
個人的には、信託銀行の事業スキームにおいて、ある企業様の社外監査役をお受けさせて頂いています。監査というものは本当に奥の深い世界と感じますし、監査基準といったものが世の中の流れから帰納的にどんどん精緻に緻密に発展していっていることを実務現場にて研鑽させて頂いている経験そのものは、自分自身にとって本当に大きな財産となっていっています。
今までの実務経験の他、行政組織や司法書士会等での様々な委員の立場の経験値によるバランス感覚や、第三者的な立場からの率直な意見が大きく役に立っているように感じます。
司法書士という職業は、準公的な職業です。公的な側面と民間の側面と両方をクリアーしなければなりません。わかり易く言えば、社会的な公器であると同時に、事務所の経営者である、という両方をバランスよく満たしていく必要があるという事になります。
その中で、一つ大事な事があります。それは、社外監査役としての働きを求められているのであって、専門家(司法書士)としての意見は参考意見にしかならない。という事です。
もちろん、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、等々の専門知識や実務感覚は、その企業にとって大きな貢献材料になりますし、相手方もその感覚の提供を望んでおられるのがほとんどでしょう。
ただ、会社法上としてあくまでも求められるのは、個人としての社外(取締役・監査役)役員として、しっかりとした機能・働き、透明性の高い素朴な意見の具申がまず第一と感じています。
お受けさせて頂いている社外監査役の仕事にしてましても、理論的な・ロジックのアプローチは前提として、ともすれば『感情的になりすぎているのでは・・・』とも言われかれないような、当事者の方々の赤裸々な生々しい本音や声をそのまま何度もお伝えさせていただいたことで、結果として大きな道筋につながったケースがありました。
これは、第三者立場からの率直な意見の具申が、功を奏した一例かと思います。
そんな社外役員制度は、すべての株式会社に義務付けられているわけではありません。
社外役員制度の細かい議論(特に責任限度や責任免除の問題等)は、これからの時代の流れとしては、たいへん重要となってくると感じます。役員を依頼される立場からも、受けさせて頂く立場からも、両方ともに大変重要な部分になっています。
ここにあるのは、役員としての損害賠償責任の話です。
原則として、今の経営陣(代表取締役、取締役、監査役等々)の方々のも連動してあてはまってくる話ですので、非常に重要な部分になります。近年、莫大な損害賠償責任を認定されたような判例もでてきていますので、あまり過敏になりすぎると委縮してしまいかねませんが、全く気が抜けない部分です。
ただし、あまりに役員としての損害賠償責任に目が行き過ぎると、肝心の役員の担い手がいなくなる、という懸念がでています。
しかし、多くの損害賠償の事例は、例えば、会社として粉飾決算をしたうえで融資を取り付けるなり、明らかな欠陥商品を販売した場合等々の酷い事例です。そもそも会社としての中身がしっかりしていない会社という事かもしれませんし、社外役員を就任される想定をすべきでない会社という事にもなってしまうかもしれません。D&O保険のような、会社役員責任損害賠償保険についても、今後サービスの充実や拡充が必要となってきています。
一言でいえば、その会社が社外役員として就任されるにあたって、信頼できる所なのかそうでないのか、ということの判断は、その企業のコンプライアンス、後述のコーポレイトガバナンス等々の問題がそのまま反映されてくるという事になっていきます。
就任先の企業のお立場から言えば、就任の段階で、それ相応のいい意味でのチェックは入ってくる、その段階からすでに、第三者的な立場からの監査なりシステムの再構築(コンプライアンス、リスクマネジメント、コーポレイトガバナンス等々の視点から)が始まっています。
また、社外役員として重要な言葉として、『コーポレイトガバナンス』という言葉があります。一言でいえば、企業統治・会社の内部統制 といったとことです。
ここは、経営陣の責任問題からくる損害賠償責任や監査責任論に絡む話ですので、非常に重要な部分です。きちんとした内部統制の仕組みができていたのであれば、経営陣に責任はない、逆に内部統制の仕組みができていないのであれば、経営陣はその責任を免れえない。近年の代表的な判例を皮切りに、そんな裁判例が増えてきています。
内部統制=コーポレイトガバナンス がしっかりできているかどうかが、その企業の大きな分かれ目になっていきます。
企業のおいて、このようなシステムの構築を見据えていかれる際も、社外役員(社外取締役、社外監査役)は大変メリットのある制度と感じます。
社外の立場から、ともすれば耳の痛い事を言い続ける事が仕事であるので、このような透明性や公益性の高い、風通しのいいシステムを作っていかれるには好都合の存在であるからです。
特に、ベンチャー企業や若手企業家の新設法人については、大きな羅針盤になっているケースもよくお見かけいたします。
今回(平成24年度)、法務省の法制審議会においては、「大会社への社外取締役の起用義務付け」は、見送られる形になりました。
しかしながら、東京証券取引所の代表取締役社長の斉藤惇氏は、
『独立した社外取締役の確保のお願い』のコメントを平成24年8月1日付で出されています。
(参照HP 独立役員の確保 日本取引所グループ
上場企業への適用となる様ですが、
海外においては、社外役員制度はほとんどの国が採用しているシステムです。
将来、日本国内においても、上場している、していない に関わらず、
このようなシステムの導入が抜本的にされていくことは、非常に可能性が高いことと個人的に思います。
また、会社を見渡す際の一つの鍵であるファイナンスの面、会計経理の分野における、会計基準においてもその流れは同様になっています。
近年耳にするようになった言葉として、『IFRS』というものがあります。国際会計基準(International Financial Reporting Standards)の略称です。
世界共通の会計基準にしましょう。時価評価をバランスよく反映しましょう。投資家や取引先のために、一つの会計基準にして色々な企業を見渡しやすくしましょう。というのがわかり易いかもしれません。
近年は強制適用が取り沙汰されているIFRS国際会計基準ですが、今回の社外取締役の義務化のそのままの裏返しのような話になっていきます。
なぜなら、国際会計基準のIFRSには、欧米や諸外国の最先端の企業の経営管理システム(経営陣:役員の枠組み)が色濃く反映されているからです。
海外においては、社外役員(委員会制度)については、スタンダードモデルになっています。IFRS国際会計基準におていも、社外役員制度の考え方は前提となっていると言ってしまっても過言ではありません。
社会の大きな潮流として、このような制度が基本的なものとなっていく。どの企業形態であれ、大きな流れには合わせていった方がよい。率直な感想です。
また、このような近年の会社法改正の流れは、諸外国(欧米)との政治的なバランスの影響度が大きい事も事実です。執行役員制度や委員会制度等々も日本の会社法に導入されましたが、具体的なイメージは、欧米の企業形態を思い浮かべて見られるのが一番早いかもしれません。
諸外国の政治的・経済的な思惑も見え隠れするところです。
このような制度自体の可否を論じることも重要ですが、それと合わせて一つ一つの企業体において、このシステムをどう上手に日本において活用していくのか、という所が一番大切な部分になっています。
制度の可否や、日本のシステム自体を吸い取られてしまったり、壊されていってしまわないようにするための交渉(外交)の部分は、政治家や官僚といった方々のご職業の役割です。
こちらは一つ一つの企業様の現場において、精一杯の工夫をさせて頂いていく。という所がスッキリした結論かと思います。
『司法書士』という職業を通しての、そんな社外役員へのかかわりの仕方は大きく二つあります。
〇一つは、定款や登記事項変更、社外役員就任登記を、登記業務の代理として関らせて頂く部分(登記業務として)
〇一つは、「司法書士」という専門家が、社外取締役や社外監査役として、企業そのものと関らせて頂く部分(社外役員として)
一つ目については、司法書士と職業のニーズは高いと思われます。
商業登記専門分野そのものです。例えば、通常の会社が社外役員制度を導入する際は、社外役員に関する変更、商業登記上の処理が必要となってくるケースが多いからです。また、例えば、社外役員の責任限定契約等の内容についても、きちんと商業登記簿上に反映する必要が出てきます。
二つ目の社外役員としての役割については、
専門分野そのものの業務がお役にたつというよりは、
その中にある感覚(特にバランス感覚、実務感覚)といったものが大きな貢献材料となる。
そう感じます。
こちらの発言は、社外(取締役・監査役)役員の立場での発言であって、
専門家(司法書士)立場の発言は参考意見にすぎないからです。
社外役員であって、顧問契約者ではありません。
実際に、企業、特に中小企業においては、この2番目のニーズは非常にたくさんあります。今後の中小企業や地域の活性化の一つの鍵になっていくように感じます。
多くの中小企業においては、法務部やコンプライアンス体制、コーポレイトガバナンスといったもの自体が存在しない、或いは機能していません。
これは、地域や日本の大きな損失です。
社外からの第三者的な立場による、その企業様への「きっかけ」を大いに活用される。
それが、コンプライアンスや企業倫理といったものの感覚を会得されていく一つの「きっかけ」になっていく。
また、その際に言えるのは、弁護士と司法書士の上手な使い分けも必要でしょう。
弁護士の訴訟や訴訟の予防を前提としたメンタリティーと、
司法書士の登記業務の双方代理の歴史に根差すメンタリティーを
上手に使い分ける仕組みづくりがとても大切です。
(参照:プロフェッションの世界 『企業法務』 司法書士 鈴木龍介 先生)
専門業務そのものではなく、専門業務の奥にあるメンタリティー・『感覚』をお伝えすること。
が社外役員にまず求められることであるからです。
そして、一番最重要なのは、
社外役員は、あくまでもその企業様への貢献させて頂く一つの立場にすぎない。
という事実です。
ベンチャー企業やノウハウがまだ少ない企業にとって、社外役員制度は、
有能な退職後のシニアの世代の方々の人材活用という意味でも活用されてきています。
実例として、多種多様なシニア世代の方々の人材バンク、シニア起業支援サービス、社外役員としてのシニア起業向けレンタルオフィス等々、次々に新しいサービスが立ち上がってきているようです。
また逆に、学生のお若いお立場で、社外役員として関わられるようなケースもでてきているようです。『スーパー高校生』といわれるような、高校在学中にすでに企業において目覚ましい結果をアドバイスされておられる方々も出てきています。
ここでお伝えさせていただきたいのは、求められているのは専門分野の業務そのものではない。
という事です。その人の持ってられる、『感覚』が一番求められている。という所です。
次々に導入される会社法の新しいシステム、その中の一つの社外役員制度。
本当に素晴らしい夢のあるシステムかと思います。
今後の日本の社会に、大きな素晴らしい枠組みをいれていくことのできる制度の一つと感じます。
もっともっと、日本という国が、人材という いろいろな方々の 「 素材 」を
活用できる場であってほしいと願っています。
顧問契約 や 社外役員 の上手な活用をされての、貴社の健やかな発展を願っています。
ありがとうございました。
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