法律職と福祉職

助かるための支援の輪

 

司法書士として頂いたご依頼の中で、特に成年後見問題、権利擁護問題、多重債務問題 と向き合って頂くなかにおいて教えて頂くことが沢山あります。

その中でとても大切やな。と感じるのは、依頼者なり相談者の方々が 『ご家族の話し合い』 を続けていかれることの重要さです。毎日夜寝る前に家族で10分話す、夫婦で10分話す。ただそれだけの継続で変わっていかれた姿を沢山見させて頂いています。

 

そして、もうひとつ大切なのは他の専門職の方々と連携をとっていかれることになってくるかと思います。

 

 

 

 

法的支援だけでは・・・

 

例えば、ご家族の中に高齢者なり障がいを抱えた方がおられる場合、

家計簿をつけられる努力なり、ご家族の話し合いなりで、中々状況が打開していかないケースがあります。

 

 

このような場合は、市役所や福祉行政機関と密接な連携をとっていかれることが足がかりとなるキーポイントになります。

弁護士なり司法書士なりという法律関係の職業は、法律的な支援・法務的な支援は得意でしょう。

しかしながら、率直な印象としてましては、生活支援なり、その人そのものへの人的支援という意味では、そこまで踏み入ってされる余地や時間があまりない先生も多いのかな・・・、とも感じます。

あくまでも個人的な印象です。 

 

 

 

法律職の相談スタンス

 

この部分については、法律関係職と福祉関係職の二つの職業上の間に、

根本的な性質の違いが横たわっているようです。

 

例えば、福祉関係職である社会福祉士の方が、相談者の方の相談を聞かれておられる場合、

司法書士としては、本当によくそこまで相談者の内容を聞きっぱなしで聞くことができるな・・・、

と感じるときがあります。

 

自分自身としては、相談者が話している最中でも、

「それはどういう意味ですか?」とか

「そこの事実はどうなんですか?」と「ここの部分はどうですか?」とかいう様に

質問を差し込んでいってしまいます。

 

相談がそのうち質問になり、そしてはしまいに詰問になっている。

自分が主導権を完全握ってしまって話しまくって納得させてしまう。

実際に文章にしてしまうと、我ながらちょっと恥ずかしい姿です。・・・が事実です。

 

人の話を最後まで聞かないで、結論をだそうとしがちになる傾向。

もっと恥ずかしいですね。小学生みたいです。

 

 

ところが、福祉関係職の方々の相談スタンスは、法律職の様に聞いていく(或いは問い詰める)様なスタンスではなく、ひたすらに聞いて聞いての連続でした。

これは、ある行政の相談会で、司法書士と社会福祉士がペアになって、ある障がい者のご家族のご相談に乗らせていただいたときに感じた事です。

『本当にまあ、よくあそこまで聞く一方で相談者の方を受け止め続ける姿勢がとれるな。自分はそこまでようできへんし、しかもあえてしていない・・・』 恥ずかしいやらビックリやらでした。

 

その時は、福祉職の方は、同じ話を延々と優しくうなずいて聞いているのですが、

せっかちで短気な自分自身としては、

『これはこうこうでこうやろ。結論言ったら終わりやないか。』

『何回同じこと話しているねん。』

言葉にすると笑えてきますね、勝手に徐々に腹立たしげにしているような、

情けない自分自身の姿があります。

 

相談後に、すぐにその社会福祉士さんに思わずお伺いしたのが、

『なんでそんな一方的に聞き続けることができるのですか?腹とかたたないですか。』 

でした。

なんだかより一層やわらかい空気でもって、『受容』や『傾聴』という様な言葉を教えていただきました。

福祉の勉強をし始めた、一番最初に学んだことですよ。とおっしゃっておられました。

 

僕は一番最後に学んだことです。全く自分にないやんか・・・。

懐の浅い自分へしみじみ反省しながら、妙に感動してしまったのを覚えています。

 

なぜならば、

その時に司法書士と社会福祉士の二人での相談会にこられた当の相談者様は、

何度も何度も頭を下げてお礼をされて、相談室を後にされた姿があったからです。

『何の解決にもならなかったようやけど、何なんやろうかこれは・・・。』

 

言い過ぎかもしれませんが、

法律職というのは、その人そのものを『受容』する態度であったり、

その人の心なり体全体の微細な動きを感じるぐらいに話を聞いていく『傾聴』ということは、

苦手な人(或いは、あえてその作業を省く人)が多い印象があります。

あくまでも福祉職の方と比較しての話ですが。

 

特に自分自身としましては、

人の話を聞くのがそもそも苦手な上に、あえてその作業を省いて結論を出したがる。

大いにあてはまる、典型例です。

 

 

自分自身としましては、

この出来事があってから、

相談をさせていただく際に、

依頼者の方とのやり取り際のスタンスが、

少しずつ変わってしまっていると感じています。

 

受容とか傾聴のスタンスを取った方が、

本音の会話や話の要点の受け取りやお伝えが、

結果として早くなっているようにも感じます。

 

 

 

 

福祉職の現場での悩み

 

その一方で、

社会福祉関係職の方がの現場での悩みというものもよく聞きます。

法的な処理を活用されてしまえば、すぐに道筋がつきそうな事例に、

延々とつきあっておられるケースです。

意外にも、少なからず見受けられます。

 

 

 例えば、

成年後見制度を利用される、

内容証明郵便を送る、

示談書を作成する、

債務整理手続きをされる、 

等々をしてしまえば、即座に解決されてしまうような状況です。

 

 

即効性のある解決方法がすでにあるのに、

当の福祉職の方が相談者の言われる内容を

延々に『受容』なり『傾聴』し続けてしまっている状況です。

本当に延々と1年以上も『受容』をしてしまっていた、気の毒なケースもありました。

 

結果として、相談を聞かれている福祉専門職の方その人そのものが、疲労困憊し、

心身のバランスを崩して心の病気の領域に入ってしまい、

離職されていってしまった大変気の毒なケースでした。 

しかもそのような離職ケースをお見かけしたのは、お一人やお二人ではありません。

 

 

法的支援と生活支援と人的支援

 

そのような意味では、

『車は両輪があって初めて前に進んでいく』 の話ではありませんが、

法的支援生活支援の両側面からのアプローチが必要不可欠かと思います。


(これは、恩師の先生から教えていただいたアイデアです。

これにもう一つその人そのものの存在への支援、

例えばエンパワーメントのような 人的支援 が加われば、

本当の意味でその方そのものが助かっていかれる環境となります。  参照HP PASネット

 

 

お互い様に専門職の特性を生かして

協力・連携の工夫を

依頼者の方の支援につなげさせて頂く。

 

その中で、

生活保護という様な国のサポートや、

高齢者・障がい者を支援する制度や行政機関等のサービスの活用、

を検討されたり利用される、

このような作業をされるていかれることが大変重要となってきています。

 

 

ある意味、ひとつひとつ地道に環境をかえていかれる地道な作業です。

込み入った複雑な事例ですと、一筋縄に、一朝一夕には問題解決に全くとどきません。

そこの部分をもどかしく感じられる依頼者の方もおられますし、

周りの関わっている方も気の遠くなるような思いを持つ時もあります。

 

 

ただ逆からみれば、

一つ一つ地道にその方の環境をかえていかれる作業をしていけばいくほど、

心配の材料がどんどん減っていく、スッキリした生活になっていく、

ということになります。

 

ここは連携をとって前向きに踏ん張っていくスタンスが必要ですね。

助かられた後の、何とも言えない喜ばしい顔を思えば、苦労ではありません。

 

 

『権利擁護』という言葉

 

ここ最近、専門職柄としてよく耳にする言葉に『権利擁護』という言葉があります。

 

なんだか堅苦しい言葉に聞こえますね。

 

平たくいうと、

『その人そのものにまつわる権利 をきちんとベースとして機能できるように、活用できるように、

みんなで協力して実現できる環境を整えて行きましょう。』

ということになります。

 

全然、平たくなっていませんね。

もっと平たく言えば

『何がしあわせかはその人自身が決める事。

でもそれをきちんと選択する環境はしっかりと整えてあげていきましょう。』

という意味合いでしょうか。

 

 

みんなのもっているいいところを、

お互いに仲良く出し合って上手やっていきましょう。

という表現のほうがわかりやすいかもしれません。

法律の言葉は難しいです。

 

 

近年、成年後見法制度・システムで、先駆的な取組みをしていっている国にイギリスがあります。

イギリスの成年後見法制度の、基軸の考えの一つに ベスト・インタレスト(best interrests)があります。

日本語訳としては、 『ご本人さんの最善の利益』 という言葉だそうです。

 

分かり易くいいますと、

たとえ周りが「全部こうするのがいい。」と仮に言っていたとしても、

ご本人さんが『そうでなくてこうがいい。』という所が一番大事である。

というような表現になるかと思います。

 

そして、このような考えからは取組むことが出来ないように見える(時間・コスト・人員等の問題から)、

現場現場においての実情が本当にいろいろとあります。


例えば、セルフネグレクトというようなケースは典型例でしょう。

(掃除しない、風呂に入らない、ゴミ屋敷に住むのが一番自分としてはうれしい。)

ここの部分は、公と私のバランスという意味合いにおいても、とても勉強になる部分です。

 

そして、この言葉(ベストインタレスト)の指し示す方向は、一つの大きな指針になります。

今後の成年後見制度や福祉政策、ひいては法システム(特に民法)の

将来の大きな道標になっていくと言われています。

 

 

 

ご本人さんの周りにネットワークをつくる、支援の輪を作る、協力体勢をつくる、等々、表現はたくさんあります。

 

このような目線や意識を持たれること自体が

これからのいろいろな社会的な、家庭的な、法的な、問題や課題を、

を解決されていかれる(問題が氷解していく)際に必須となってきています。

 

 

このような専門職の横断的な連携融合をしているケースなり仕組みが、

全国的にいろいろな形で多く生まれてきています。

 

そして、そこの支援のシステムをどうしていくか、

相談体制、連携関係はどうつくっていくのか等々の部分については、

全国津々浦々の各市町村が

現在進行形で日々取り組んでいかれている大きな課題のひとつです。

 

 

 

一つの窓口からの色々な助かりへ・・・

 

一つの窓口を通じて、その家族なり世帯が助かっていかれるために、

たくさんの支援の関わりを作らせていただく事、

それも当事務所の重要なテーマの一つとなっています。

また、この際には、上記の「ベストインタレスト」の目線の織り込みが上手に出来ていけばいう事ありません。

 

そのような支援の関わりをつくられた後の、

依頼者がほっとされた顔、喜んでおられる姿、

そのご家族、世帯の方々、近隣の方々の、なんだか安堵されたやわらかい雰囲気を感じるとき、

なんともいえない嬉しいものがこみあげてきます。

 

もしかしたら、そんな喜びや平和な感覚を頼りに仕事をしている自分がいるのかもしれません。

 

 

 

ご本人さんの周りに、いろいろな支援の輪が広がって、この国が豊かになっていく事を願っています。

 

 

 

 

 

 

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