相続登記 〜相続の仕組みについて〜

相続についてのご相談や、当人さん同士での話し合いをされるような際に、

相続についての、『 基本的な仕組み 』 といったものを理解されておかれることは、

とても大切な部分になります。

 

基本的な民法の条文から解説をする方法もよいのですが、

当のご本人さん(被相続人)やそのご家族(相続人)の方々の目線からのアプローチをしてみましょう。

 

ご本人さんの 『 遺言書 』 がある場合。ない場合。

遺言書があるかないかは、第一の重要な分岐ポイントになります。

 

 

 

 1.遺言書がある  → ご本人さんの遺言書の指定による


 2.遺言書がない  → 民法に定められた法定相続のとおりに相続


 3.   〃          → 相続人全員による遺産分割協議で相続分を決定

 

 

 

 

上記の3つが、大まかなパターンとなります。

 

ご本人さんが亡くなられた後、今後どうしていったらよいのか・・・。というケース。

ご本人さんがご生前の場合に、将来のご自身の相続(亡くなられた際)のことの準備をされるケース。

等々

上記の3つのパターンのご理解をまずしていただいたら良いかと思います。

 

 

では、それぞれについて、もう少し細かく見ていってみましょう。

 

 

 

 

 

1.遺言書があるケース (民法 第7章 遺言 第960条〜第1027条)


原則的には、ご本人さん(被相続人)が遺言書に記載された通りの相続の割り振りとなります。

 

ご本人さん(被相続人)は、ご自身の相続財産についてを遺言において、自由に割り振り(配分)できます。

 

 

 

・第960条 (遺言の方式)
 
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

・第964条 (包括遺贈及び特定遺贈)
 
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

 

また、時々ある話として、本来の相続人でなく、相続人以外の方を受け取り人(受遺者)として指定されるケースがあります。このような、相続人さんの遺留分(後述いたします)を侵害するような割り振り(配分)についても、直ちに無効になるわけではありません。


あくまでも、ご本人さん(被相続人)のご意思が一番大切な部分になるからです。

 

ただし、相当の血の繋がりがある方々の権利や利益も全く無視してしまうのはバランスが悪くなってしまいます。そこで、一部の法定相続人については、本来の相続分の2分の1の相続分(遺留分)の権利を認める事にした。のが遺留分の制度の趣旨になります。(民法 第8章 遺留分 第1028条〜第1044条)

 

・ 第1028条 (遺留分の帰属及びその割合)

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じて

それぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
  一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
  二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

(例: 遺言書 亡父 ⇒ 第三者  へ相続させるの指定がある場合

      亡父の妻・息子    がいるケース  遺留分 妻 本来の1/2×1/2=1/4  息子も同じく

      亡父の妻・兄・妹  がいるケース  遺留分 妻 本来の3/4×1/2=3/8    兄・妹 0

      亡父の母           がいるケース    遺留分 母 本来の 1 ×1/3=1/3            )

 

・第1042条 (遺留分減殺請求の期間の制限)

減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時   から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 

ですので、遺留分侵害を受けるような内容であっても、その遺留分の侵害をうけている相続人さんが減殺請求をしない限りは、遺言の内容は原則としてまるまる有効になります。また、減殺請求をできるのも、原則として1年間という期限がありますから注意が必要です。

ここで注意しないといけないのは、条文上(第964条)は、遺留分に関する規定に違反することができないとなっていますが、はじめからそのように遺言書をつくらないといけない、というわけではないという所です。

 

 

まとめますと、遺言書においては、ご本人さん(被相続人 又は 将来の被相続人)のご意思によって、

その内容や割り振り、配分といったものを自由に指定できます。

ただし、上記の遺留分の制度というものを、よくよく見据えた上でのご検討が大切。とも言えると思います。

 

 

《 補足 : 遺言書があるケースで、遺産分割協議ができるかどうか? 》


遺言書があるケースでも、相続人全員での遺産分割協議(後述いたします)をされるケースがあります。

 理屈の部分についても少しわかりにくいかもしれませんが、ご参考に一応書かせて頂いておきます。

 

遺贈や「相続させる遺言」があるケースの場合、相続が発生すると、ご本人さんの遺産(相続財産)は、

直ちに相続人(遺言書で指定された相続人)の所有となる効力が発生します。

ここで、遺言書によって財産を取得した相続人は、遺言によって得た利益を放棄することができます。

そして放棄をすると、相続財産は、相続開始のときにさかのぼって相続人全員の共有の状態に戻ります。

そこでもって、全員の合意(遺産分割協議)によって、あらためて分割協議ができることになります。 


流れとしましては、 

遺言書で指定 ⇒指定相続人が全部利益放棄 ⇒相続人全員で相続する事になる ⇒みんなで遺産分割

となります。

 このような検討がされやすいケースとしては、本来の推定相続人と、遺言書での指定相続人が同じ方々の場合になります。

 

 

 

 

2.遺言書がないケース → 民法に定められた法定相続のとおりに相続

 

 

ご本人さん(被相続人)が遺言書を作っておられなかったケースになります。


遺言書においての指定がないので、相続財産の割り振り(配分)は、民法に定められている法定相続分に基づいて配分されます。

 

 

 

 

 
・第900条(法定相続分)

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、
   直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、
   兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
   ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする
   兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする

 

条文だけでは少しわかりにくいかもしれません。

  相続人の配偶者(ご健在の場合)は、常に相続人となります。

  その上で、以下の方々と共に相続をする形となります。

    第一順位 被相続人の子、子が相続開始以前に亡くなっている場合は孫など(直系卑属)

    第二順位 被相続人の父母など(直系尊属)

    第三順位 被相続人の兄弟姉妹(けいていしまい と読みます)

  ここの順位の部分のキーは、上の順位の相続人がいれば、下の順位の相続人に相続はありません。

  また、養子は相続開始前に縁組をされていれば、相続人と認められます。

  少しマイナーなケースとして、お腹の中の赤ちゃん(胎児)については、「生まれたもの」とみなされます。

 

  そして、それぞれのケースの配分割合になりますが、

    配偶者 と 第一順位相続人   配偶者 2分の1  第一順位相続人 2分の1

    配偶者 と 第二順位相続人   配偶者 3分の2  第二順位相続人 3分の1

    配偶者 と 第三順位相続人   配偶者 4分の3  第三順位相続人 4分の1

 

  となるのが、結論です。

 

 

そして、相続人にあたる方が、相続が発生する前にすでにお亡くなりになっていた場合は、

代襲相続という仕組みの話が出てきます。


・ 第887条 (子及びその代襲者等の相続権)

1.被相続人の子は、相続人となる。

2.被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、

  若しくは廃除によ  って、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

  ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3.前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、

  若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

 

少し条文がわかりにくいかもしれませんが、

将来に相続人になる方(推定相続人)が、ご本人さん(被相続人)が亡くなられる前に(あるいは亡くなられると同時に)亡くなられた場合(あるいは、相続欠格や廃除に該当する場合)、

その者の子(直系卑属といいます)が代わりに相続される という事です。

  (例  今回 父が亡くなった  息子は既に亡くなっていて 孫がいる      父 ⇒ 孫 に相続

           母が亡くなった  亡兄と妹 亡兄には子供二人がいる  兄の子1/4と1/4 妹1/2 )       

 

また、推定相続人が配偶者や父母のような直系尊属の場合は、代襲相続は認められません。

子・孫・ひ孫のような直系卑属の場合は、再代襲も認められます。

  (例  今回 父が亡くなった  息子・孫は既に亡くなっていて ひ孫がいる  父 ⇒ ひ孫 に相続)


 

 

同じ順位相続人が複数名おられる場合は、その相続分を均等割りする形となります。

  (例: 亡父  相続人3人 母・息子・娘 の場合 ⇒ 母 2分の1 息子 4分の1 娘 4分の1)

 

また、第三順位相続人のうち、父または母だけが同じの兄弟姉妹(半血兄弟といいます)は、

父母ともに同じ兄弟姉妹(全血兄弟といいます)の2分の1となります。

  (例; 亡夫  相続人3人 妻 兄(半血)・弟(全血) ⇒ 妻 4分の3 兄12分の1 弟 12分の2)



それから、非嫡出子(法律上の夫婦でない者との間で生まれた子)の話が近年話題になっています。

嫡出子と非嫡出子との相続分については、平成25年9月4日に最高裁にて違憲決定が出されています。

法900条4号の規定が、憲法14条1項に違反すると判断したのです。


メディアにてはよく言われていますが、「婚姻、家族の著しい多様化、これに伴う婚姻、家族のあり方に対する国民の意識の変化が大きく進んだ」ことだそうです。

判決文には、「具体的には、非嫡出子の出生数が現在も増加傾向にあること、平成期に入って以降は、晩婚化、非婚化、少子化が進み、これに伴って中高年の未婚の子供がその親と同居する世帯やいわゆる単独世帯が増加していること、離婚件数、特に未成年の子供を持つ夫婦の離婚件数、再婚件数も増加していること」を挙げています。

(参照 裁判所HP判例情報 / 判決文全文 )

ここのところは、今後の法改正(民法)の部分ですので、政治が大きく働く部分にもなってきます。

 

 

 

・・・なかなか、次から次にいろいろな話が出てきて、相続の仕組みの理解も大変です。


ただ、一度理解されてしまえばそんなに難しい話ではないので、この際、一気に理解してしまいましょう。

相続人さんがそもそも相続人としての『 資格 』 があるのかどうか。という問題が出てきます。

 

 

 相続欠格者 と 推定相続人の廃除 という仕組みです。

 

 相続欠格者は、分かり易く言いますと、ご本人(被相続人)に不義理をしすぎてしまったような人は、

 どの程度がいけないかを先に法律で定めておいて、相続人になれない事にしましょう。という事です。

 

 

・第891条 (相続人の欠格事由)
 
次に掲げる者は、相続人となることができない。

一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、
   又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。
   ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、
   この限りでない。
三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、
   又は変更することを妨げた者
四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

条文の内容を見られたら、何となくの印象はわかるかと思いますが、結構強烈な事例です。

 

また、上記のようなものに該当しないような場合でも、推定相続人の廃除という仕組みがあります。

法律上の仕組みの観点から、あまりに不義理をしすぎた様な将来の相続人(推定相続人といいます)を、

あらかじめご本人さん(被相続人)が相続人から省く(廃除)することのできる制度になります。

 

 

・第892条 (推定相続人の廃除)

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

この仕組みキーの部分は、家庭裁判所に請求 するというところです。

ご本人さんの気持ちの部分だけでは、将来の相続人(推定相続人)の廃除をすることはできないからです。

遺言書においても書く事ができます。


家庭裁判所では、「虐待」「重大な侮辱」「その他著しい非行」かどうかを判断されるにあたっては、

虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会的地位、教育の程度、家族の状況、被相続人側の責任の有無、宥恕(寛大な気持ちを持って許すこと)の意思の有無、その他一切の事情を考慮して判断すべきであるとされています。

そして、排除するかどうかの判断基準としては、被相続人と将来相続人となる者との間の家族的・相続的共同関係が破壊される程度に至っているかどうかによるとされています。

 

 

ここの部分は、過去に様々な裁判例(審判事例)が出ていてますので、そこの部分を調べてみられてもよいかと思います。

 

以上がおおまかな、法定相続分についての部分の説明です。

 

 

 

 

 

 

そして、最後のケースになります。

 

3.遺言書がないケース  → 相続人全員による遺産分割協議で相続分を決定


 

通常の相続においては、円満に遺産分割がなされていかれるケースが多いように感じます。

 

これは、司法書士という職業は、相続登記というシーンの仕事が多いこともあるかもしれませんが、

 

ほとんどの場合は、円満にご家族で話し合いがまとまっていっておられるように感じます。

 

 

 

ドラマや映画であるような、熾烈な相続争いについては、あまりお見かけしません。

そのような紛争性のあるご相談については、すぐさま弁護士先生へのご相談をお願いしています。

そもそも、最初から弁護士先生の所へ行かれているのだとも感じる所です。

 

 

そして、その 遺産分割協議 になりますが、

相続人はいつでも遺産について分割協議を行う事ができます。(民法 第906条〜第914号)

ただし、遺言書があるケースにおいて、「 5年を超えない期間の遺産分割の禁止 」 の指示がある場合は、

この期間は遺産分割をすることはできません。

 

また、遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません。


ここは、一番注意をしないといけない所です。

 

相続人の中に未成年者や被後見人(認知症等の方)がおられた場合においてもです。

 

この様な際の遺産分割協議において、例えば未成年の方については、親御さん等(法定代理人)が代理をするのが通常になります。

その親御さん等(法定代理人)が同じく相続人のお立場である場合は、この未成年者のための別の代理に(特別代理人)を家庭裁判所に選任することが必要となってきます。

 

これは、親御さん(法定代理人)の立場 と 未成年者の立場 のそれぞれの利益が相反する結果になってしまうおそれが出てきます(利益相反といいます)。

未成年者の方の利益や権利が果たして守られるかどうかわからない。部分があるからになります。

 

 

ご自宅の名義を亡くなったご主人さんから奥様に移す際等に、意外と生じてくるケースです。

通常の相続登記に比べると、家庭裁判所への申立が別途必要になるなどの手続きが増える部分もありますので、注意しないといけない部分です。

 

 

また、ご本人さん(被相続人)が亡くなられる前に、

将来の相続人さん方(推定相続人全員)で、前もって将来の遺産分割協議書を作っておかれるケースがあります。これは、法律上については効力がありません。

たとえ、公証役場にいって公正証書でそのような文面をつくっておいたとしても、裁判所で争いになった場合は、その効力は(ほぼ)認められません。

相続が発生していない以上、推定相続人さん方の財産でも何でもないからです。

ここまでされるのであれば、ご本人さんが遺言書を作っておかれる方が賢明かとも思われます。

 

 


・・・と、いろいろなケースがあります。


また、相続人さんの立場での方法論としては、

相続放棄 や 限定承認 や 相続分の譲渡 といった方法があります。

様々な組み合わせやパターンがあります。


ご本人さん達がより納得のいかれる結果になられることが一番と感じます。

その先には、亡くなられた当の本人さんが、その状況を見られていたとしたら喜んでおられるかどうか・・・。

もしかしたら、一番の導きになる目線や意識になるのかもしれませんね。

 

・・・もしも、故人の方が見ておられたら 安心をされる、円満な相続を祈ります。

ありがとうございました。

 

 

 

平成30年7月に、民法の相続法の改正案が成立しています。

 大事な項目がいくつか改正となっていますが、相続税に大きな影響を与える

 配偶者居住権というものの創設が大きな改正といわれています。

 各項目の施行後に適時追記させて頂きます。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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